【計画】
　金峰山に登るルートはいくつかあるが、川端下（北）、大弛峠（東）、みずがき山荘（西）からの道が一般的。一方で、本来の表参道は南側にある。古の人は山麓の金桜神社から登り始め、御室小屋で一泊して翌日山頂に立つ、という行程を辿ったらしい。
　今回山行計画を練っていて目をつけたのがこの金峰山表参道。林道の開発が進んでいるため、今では御室小屋跡近くまで車で入れるが、易きに流れて見失ってしまうものも多いはず、との屁理屈をつけて古人と同じルートを辿ってみることにした。甲府からタクシーで金桜神社まで出て歩き始め、黒平、水晶峠を越えて御室小屋跡地でテン泊、翌日金峰を踏んでみずがき山荘に下山、との計画だ。初日の林道歩きを少しでも避けたいので、金桜神社から猫坂峠を超えていくことにした。

【山行記】
＜初日＞
　甲府駅でタクシーをつかまえ、金桜神社まで。
神社本殿まで登ってもらい、参拝してから出発。まずは神社入口の鳥居まで下り、右脇に延びる林道を進む。

　１０分ほどで分岐。左手には’道崩壊につき進入禁止’のような標識がある。では、ということで直進。

　踏み跡は沢の左岸沿いにつけられている。しばらく進むとあばら屋が出現。左奥に進むと小滝。近くに祠と剣。 どこぞの修験場なのだろうか。いずれにしても行き止まりなので、分岐まで引き返す。２０分ほどロス。

　今度は通行禁止の方向に進む。
踏み跡は明瞭だが、荒れている。道は沢の右岸沿いに付けられており、先ほどの滝を高巻いている。

　しばらく進むと木橋。これは朽ちて通行不能なので、適当に渡渉。
鉄製の橋を幾つか渡り返し、東寄りに進むと林道に合流。林道はまっすぐ北に伸びている。これが猫坂だろうか。
（帰宅後調べてみるとこれは林道猫坂線。横着して地形図を持っていかなかったのが間違いの元。本当の猫坂は林道と交差して北東に延びている。）

　進むにつれて道が頼りなくなり、藪が濃くなる。藪の露でズボンがびしょ濡れ。 しかも林道に出てから２０分弱でいきなり終点。この先は踏み跡も無い藪。

　引き返すのも癪なので藪を掻き分けて直進。短い藪区間を過ぎると樹林帯になる。
急登を登り詰めると稜線に出る。稜線に沿って鹿柵が張り巡らされている。

　どう見ても猫坂峠という感じではない。こりゃ間違ったな、と確信する。ただ、ここまで来てしまったら仕方が無い。御岳林道に出る算段をしなければ、と考える。

　幸いなことに、鹿柵の向こう側は伐採されているので、見通しは良い。
よく見ると、下方に未舗装林道の末端が見える。東に続いているようなので、これを辿っていけば御岳林道にぶつかるはずと考え、鹿柵の際に沿って下る。

　未舗装林道に降り立ち、東に歩を進めると間もなく舗装道路に出る。ようやく御岳林道に合流したようだ。
猫坂峠には行けなかったが、車道歩きはかなり回避できたはずなので、まあ良しとするか。

　御岳林道に合流してからひたすら舗装道路歩き。
マウントピア黒平を経て黒平に入る。小さな集落になっていて、中心部に石物群、端には神社がある。
ここまで車は２台ほど通っただけ。

　黒平からさらに林道を進み、５０分ほどで森林浴広場に到着。
ここも荒れている。森林浴だけを目当てにわざわざこんな所にまで来る客は少なのだろう。
東屋で昼食休憩。

　昼食休憩後、林道を先に。
木賊峠への分岐のすぐ先にゲート。一般車両はここまで。

　ゲートを超えてさらに林道を進むと、間もなく尾根取り付き。
といっても標識があるわけではない。法面に古いテープとそれらしき踏み跡があるだけ。

　踏み跡に従って法面を強引によじ登ると尾根に合流。あたり。

　細い踏み跡を辿っていくと、１時間半ほどで未舗装の林道に出る。
森林浴広場から続く林道をずっと辿ってくるとここで合流するようだ。

　林道を順調に進み、２５分ほどで分岐。
分岐を左に進むも行き止まり。分岐まで戻る。１５分ロス。なんだか今日は道を間違えてばかりいる。

　分岐を右手に進むとすぐに金峰山登山口。
いろいろな標識がごちゃごちゃと設置してある。

　ここからは道はしっかりしているし、刈り払いもおこなわれている。
ピンクテープもこれでもか！というくらいたくさんついている。’金峰山表参道保存会’みたいな組織がメンテしているのだろうか。（結局、ピンクテープは金峰山山頂までしっかりついていた）

　よく整備された道を進み、３５分ほどで顕著な沢を渡る。
神子ノ沢だろう。御室小屋跡で水が取れるか若干の不安があるので、ここで3.5l補給。

　神子ノ沢から２５分弱で水晶峠。
一旦尾根を乗り越したところにあり、展望なし。ここには峠の標識と水晶盗掘不可の看板がある。言われてみれば、確かに半透明の石がゴロゴロしている。


　水晶峠から少々下ると涸沢に合流。ゴロゴロの岩だらけの沢の中を登って行く。
道が沢から離れると、間もなく開けた平坦地に出る。
ようやく本日のゴール、御室小屋跡に到着。ここまで約８時間、結局今日は他の登山者にはお目にかからず。

　平坦地には針葉樹の幼木が育ちつつある。
奥にはロープで仕切られた区間があり、中は立入禁止になっている。小屋を復活するのだろうか。


　適当な平坦地にテントを張る。よく見ると、付近には焚火跡がいくつか。

　展望がきく場所では無いし、あいかわらずの曇り空なので、夕食後すぐに就寝。

　夜半、小雨がテントをたたく。



＜２日目＞
　テントの外に出ると雨はあがっており、月と星が見える。
今日は天気が良さそうだ。

　朝食後、テントをたたんで出発。
まだ暗いのでヘッドランプを点けて進む。

　急坂を登っていくとハシゴが現れ、すぐに鎖場。
一枚岩の滑り台のようになっている。昨夜の雨で濡れているため、慎重に登る。 鎖場上部からは五丈岩のシルエットが見える。

　この後、ハシゴを幾つか超え、シャクナゲの急坂を登っていく。
小屋跡から５０分弱で片手回し岩。巨岩が微妙なバランスで屹立している。

　さらに登っていくと、所々で視界が開けるようになる。
標高を上げていくにつれて五丈岩が大きくなっていく。







　シャクナゲとハイマツの急坂を登り詰めると五丈岩の基部に出る。
金峰山の山頂端だ。ここは ３度 目 だが、五丈岩の南側を見るのは初めて。石塔が立っている。

　五丈岩を回り込んで山頂の開けた所に出る。珍しく人がいない。
天気が良いので、金峰山荘泊まりの登山客がたくさんいてもおかしく無いのだが。。。

　見慣れた景色を確認した後、下山開始。











　途中、南側の展望が開けたところから今日辿ってきた尾根を眺める。片手回し岩がちょこんと飛び出ている。視線を右手に移すと、足元から顕著な尾根が続いている。ここも辿れそうだが。。。

（帰宅後調べてみると、八幡尾根のようだ。木賊峠からチョキ、八幡山を経て金峰山の縦走路に出られるらしい。）


　メジャールートだけあって、下るにつれてすれ違う人が増えてくる。

　大日岩、大日小屋を超えて２時間半ほどで富士見小屋。
ざっと見ただけで、テントは１０張以上。けっこうにぎわっている。

　少々休憩したのち、みずがき山荘へ。１０時前には山荘到着。おなじみのバスで韮崎まで。

　今回は変化に富んだ面白い山旅だった。林道歩きが長かったが、これも古人の苦労を忍ばせるものと考えれば不可欠な要素。地味なアプローチが加わることで、他のルートには無い充実感を味わうことができた。
下山途中で見つけた面白そうな尾根を含め、奥秩父にはまだまだ遊ばせてくれる場所がありそうである。